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Episode

02

インタビュー

技術力を結集し、規格寸法の制約をデザインに変える
仮設材でつくる「切り株」の展示館

GREEN×EXPO 2027への出展に向け、大林組 モリソラミライのプロジェクトメンバーは何に向き合い、どう行動してきたのか。担当者たちへのインタビューを通じてその過程を明らかにしていくシリーズ記事第2回には、意匠・構造・電気・機械に携わった4名が登場。
Episode01で語られた出展コンセプト「New Sustainable Life with MAKE BEYOND」と、未来に向けたメッセージ「自然で心地よい幸せが続く」に則して、どのようなデザイン・構造へとつながれたのでしょうか。

Profile

株式会社大林組
設計本部 設計ソリューション部
係長

カピタニオ マルコ

イタリア出身。海外で建築設計に従事した後に来日、2021年入社。大林組 モリソラミライでは外構を中心とした空間構成、エントランスなどをデザインする意匠設計を担当。日常的には、設計やシミュレーションを自動生成するコンピュテーショナルデザインを駆使し、デザインの最適化を図る業務や3Dプリンター建築などに携わる。

株式会社大林組
設計本部 構造設計部
課長

村田 翔太朗

2010年入社。大林組 モリソラミライでは構造計画全般を担当。展示館の社内設計コンペにおいてEpisode01に登場した設計本部の箕浦 浩樹に協力し、またGREEN×EXPO 2027の開催地・横浜市在住の縁も感じてプロジェクトに参画した。日頃はオフィスビル、アリーナ建築などの構造設計に携わる。

株式会社大林組
設計本部 設備設計部
エキスパート

畑中 裕紀

2010年入社。大林組 モリソラミライの電気設備計画全般を担当。運営上の要となる演出・空調機器などの電源設計や、夜間のライトアップ演出につながる外構の照明設計に携わる。その他物流倉庫の設備設計を手掛けることが多い。

株式会社大林組
設計本部 設備設計部

保田 賢

2024年入社。入社2年目にして本プロジェクトに参画。大林組 モリソラミライが、初めて設計業務を担当する物件になった。空調換気・給排水衛生設備の計画や機器選定などを通じて快適な環境づくりに携わっている。

01 半年の展示期間、サステナビリティに則して建設現場の“仮設材”を展示館の建設材に採用

マルコ
2025年3月、展示館の社内設計コンペで、箕浦さんの“プラチナ”に次いで私の案が“ゴールド”に選定されたことから本プロジェクトに参画しました。連絡を受けた時は驚きましたが、何より、このような注目度の高い案件に関われることを誇りに思いましたね。私は2015年に開催されたミラノ国際博覧会に行った際、メインテーマであった「食」に加えて、会場全体で「グリーン」の主張を強く感じました。あれからほぼ10年後の今、今度は自分がGREEN×EXPO 2027の仕事をするということに巡り合わせを感じています。
箕浦さんのアイデアを受け、実施設計においては半分自然、半分人工の雰囲気を感じさせる「切り株」をモチーフとしたランドスケープを形づくりました。切り株は、「Explorer(開拓者)」として未来を切り拓いていく大林組を表現しています。
多様なステークホルダーや社員が携わるため意思決定に時間はかかりましたが、検討のプロセスに多くの学びがありました。また、社内案件ということで新しいソフトウェアやワークフローを実験的に使うことも認められていて、その効果を確認できたのも収穫でした。
マルコ インタビュー写真

切り株をモチーフとし、複数の円柱形状の建屋を連ねて構成した「大林組 モリソラミライ」外観完成予想図

村田
複数の円柱形状の建屋により構成され、それぞれの展示室の用途や展示物の形状によって、要求される建屋の大きさや高さが定義されました。一方で、アプローチ動線からの外観は美しいか?不自然ではないか?といった議論がたびたび起きていましたが、そうしたとき、マルコさんに3Dソフトウェアでたびたび可視化してもらったのは非常に助かりましたね。建屋だけでなく、植栽の種類や夜間の照明シミュレーションまで詳細に可視化したことでメンバー間のイメージ共有が容易になり、合意形成が早められたと思います。
マルコ
ありがとうございます。大林組 モリソラミライの意匠において最初に意識したのは、展示テーマを具体的に表現しつつ、インパクトを伴ったものにすることです。来場者が現地に訪れてランドスケープ全体を見たときに知的好奇心がくすぐられ、「ここでどんな体験ができるのか?」と面白がっていただけるような外構、エントランスになればと思っています。また、建屋と建屋をつなぐ移動スペースのデザインや、ランドスケープ設計担当者と協力しながら緑化を細部まで正確に可視化、検討することも重視しました。
村田
構造計画で私が考えたのは、建物の供用期間が約半年に限られており、しかもサステナビリティに深く連動するGREEN×EXPO 2027の展示館なのだから、恒久的な建築に採用するような材料や工法を使うわけにはいかないだろう、ということでした。そこで、出展コンセプトである「New Sustainable Life with MAKE BEYOND」と、大林組の未来に向けたメッセージ「自然で心地よい幸せが続く」に則して、切り株を模した円柱形状にする方針が固まってからは、工事現場で一時的に使われる仮設材(リース材)を可能な限り使うように検討しました。
具体的には、建屋外周部にリースの足場材であるアルバトロス(※1)を外装支持材として配置し、内側に山留(やまどめ)材(※2)とアルバトロスの梁枠を構造フレームとして構築することで建築基準法に適合した建築物としています。併せて、外装にラミナパネル(木質パネル)を採用してカーボンニュートラルへの寄与も考慮しました。さらに、コンプレッションリング(※3)や、テンションロッド(※4)を用いた構造架構形式(※5)とすることで、特徴のある構造計画としています。各部材がそれぞれの強みを発揮できるように、適材適所に割り当てて展示空間を構築しました。
村田 インタビュー写真
  • ※1アルバトロス:
    建設現場の高所で、作業員が安全に移動・作業するために組まれる仮設の作業台。安全性の向上と作業効率化を両立する次世代足場として広く用いられる
  • ※2山留材:
    地盤を深く掘削する際、土砂崩壊や地盤沈下を防ぐ「山留壁」を支え、補強する仮設の鋼材
  • ※3コンプレッションリング:
    ドーム型野球場などシェル構造の屋根において、中央の開口部や頂部に設置される環状の補強部材
  • ※4テンションロッド:
    「引っ張る力」で抵抗し、建築物を支える部材
  • ※5構造架構形式:
    柱や梁などを組み合わせて骨組みをつくり、建物の荷重を支える構造

02 チャレンジングなオーダー実現で達成感
大林グループの技術力にも注目を

畑中
私がこのプロジェクトに参画したのは、マルコさんと同じく2025年3月。箕浦さんの案をベースにして設計本部内でさらに検討を重ね、プランの統合を図っていた頃です。ただ、その時は大阪・関西万博の開催直前で意識がほとんどそちらに向いていたので「園芸博覧会って? 庭園でもつくるのか?」といった受け止めでしたね(笑)。そして、切り株を模して、仮設足場材や山留材で建築物を構成すると聞いた時の率直な感想は「そんな形の建築物の電気設備なんてやったことがない」でした。自社の展示館だけにとにかく設計の自由度が高いのは良い反面、多部署調整の難しさや、時には“無茶ぶり”があったりもします。それでも通常の案件とは違って、設計本部の担当者たちと一緒につくっていく面白さの方がはるかに大きいですね。
畑中 インタビュー写真
マルコ
特にどんな点が面白いと思いましたか。
畑中
面白くやりがいがあり、同時に難しさも感じたのは「展示空間を構成するさまざまな仮設材を、仮設材に見えないようにしてほしい」というオーダーです。例えば、工事現場を明るく照らすために使われる仮設照明を、展示物をライティングするために露出するところもあれば、建物を邪魔しないように見えない場所に納めることにも苦心しました。同時に、夜間の来場者の安全確保も必要になるため、そのバランスを取るのも困難でしたね。そもそもアルバトロスの中に電気設備を置くなんてマジか!?と思いました。
さらに、外装のラミナパネルは多角形構成で角部に隙間ができるため、建物の止水ラインが内壁側となり、外装・内壁間にある設備を防水仕様にするなどの対処が必要でした。このように、設計を詰めるほどに次々と課題が出てきたのはかなりチャレンジングでしたが、一つひとつクリアし、形になりつつあります。
保田
畑中さんがおっしゃったように、もちろん設備を隠す必要はあるのですが、一方で今回のプロジェクトは大林グループの技術力を世に知ってもらう良い機会でもあると思っています。機械設備の方では、大林グループが開発に携わってきた技術をしっかり体験してもらいたいですね。
まずは、屋外に導入する「Comfy TOUCH(コンフィ・タッチ)」です。これはベンチに冷温水パネルを組み込み、熱伝導や輻射熱を利用した“超局所冷暖房”。来場者が直接触れて冷涼感を得られるため、局所的かつ高いエネルギー効率で効果的な暑さ対策が可能になります。
二つ目は、展示室に導入する「in-DUCT(インダクト)」吹出口タイプです。周囲の空気を誘引する機構と吹出口を一体化して、吹出風量を増大させる技術です。これによって空調機自体の送風量を抑えてファン動力を低減でき、消費電力やCO2排出量の削減、さらには結露の抑制も実現します。
そして最後が屋外に設置する「さらっとミスト」です。触れてもぬれない微細ミストを噴霧することで、気化熱が生まれて周囲の空気を2~3℃下げ、快適な環境をつくります。
これはマルコさんも関わって、大林組技術研究所の金属3Dプリンターで製作する構造物「The brænch(ザ・ブレンチ)」に組み込みます。まさに大林グループの技術融合を象徴する造形だと思います。
保田 インタビュー写真
マルコ
私は今回の意匠設計では、物理的なインパクトを放ち、展示テーマをシンボリックに表現するデザインを導入したいと考えていました。ザ・ブレンチはまさにその一つです。全体的なランドスケープはもちろんですが、私が設計したザ・ブレンチもたくさんの来場者に見て、触って体験してほしいと思います。

03 今なおアップグレードの余地あり
次のステージにつながるものづくりを

インタビュー写真
畑中
大林組が出展するGREEN×EXPO 2027開催まで既に1年を切っています。マルコさんは来場者に特にどんなところを見てほしいですか。
マルコ
私が特に見てほしいところは、エントランスアプローチと、あえて見せることを意図した特徴的な設備ですね。通常の建設現場で使われている仮設材を積極的に採用しつつも、「見た目の美しさ」と「分解性」のバランスが取れた特別な展示館であることを感じていただければと思います。
畑中
確かにマルコさんが言うとおり「隠しながらも見せる」という矛盾を、どのようにバランス良く納めているかには、ぜひ注目していただきたいですね。また、切り株の建屋がライトアップされた夜景も楽しんでいただきたいです。
インタビュー写真
村田
先ほど畑中さんの話に出てきた外装のラミナパネルは、工事現場の仮囲いに合わせて高さが2mまたは3m、幅50cmを基本単位として構成されています。また、足場材のアルバトロスで構成される建屋は、アルバトロスのモジュール(構成単位)によって寸法が規定されるため、棟の高さや直径にも一定の制約が生じました。そういった条件下でも理想の意匠を実現し、なおかつ合理的な建築が可能になることを、ぜひ見ていただきたいと思います。
なお、このラミナパネルは、今後、木質系の仮囲いパネルとして大林組の建設現場で展開していく構想があり、本プロジェクトでの評価がその試金石となる可能性もあります。その意味でも外装の意匠に注目していただきたいですね。
保田
設備は決して主役として目立つものではありませんが、大林組 モリソラミライを体験する過程で、展示や演出に寄り添ってつくられた快適な空間を感じ取っていただければと思っています。
また、私が先ほど申し上げた大林グループの技術についても、「肌で感じる」ことでこそ魅力が伝わります。現場で実際に経験していただくことで、少しでも興味を持っていただけたらうれしいですね。
村田
大林組 モリソラミライは今も皆で“育てている”状態であり、より良い建築物に向けてまだアップグレードの余地は残っているといえます。できる限りブラッシュアップを続けて、次のフェーズへとつなげていきましょう。

所属部署・役職については、2026年4月時点のものです

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