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Episode

01

インタビュー

建設現場を社会に拓き、サステナブルな未来へ
GREEN×EXPO 2027、大林組展示館の出展設計コンセプトを語る

2027年3月に神奈川県横浜市旭区・瀬谷区の旧上瀬谷通信施設で開催される「GREEN×EXPO 2027」に、大林組が出展の意向を表明したのは2024年12月のこと。以来1年近くが経過し、プロジェクトは徐々に具現化してきています。本記事はそのプロセスを追いかけていくシリーズの第1回目。出展にあたって定めたコンセプト、展示館設計に込めた思いなどを、3人の担当者が語り合いました。

Profile

株式会社大林組
2027国際園芸博PVプロジェクト・チーム 課長

角野 ひとみ

2005年入社。広報、経理、人事、営業企画、現場事務などの事務部門に携わった後、2025年4月現部署に着任。主にマネジメント業務を担う。

株式会社大林組
設計本部 プロポーザルマネジメント部 課長

栗原 真

不動産デベロッパー、広告代理店、エンターテイメント会社で、根本的な考え方を明確に定義し、言語化するコンセプトワークなどを経験した後、2021年に入社。2024年10月頃、GREEN×EXPO 2027への出展に向けたキックオフに参加。コンセプトワークや展示館の設計コンペ審査にも携わった。

株式会社大林組
設計本部 大阪建築設計部 課長

箕浦 浩樹

2010年入社。東京、大阪、名古屋など各地で勤務し、ホテル、研究所、オフィス、音楽ホール・図書館などさまざまな建築設計を手がける。展示館の社内設計コンペで最優秀の“プラチナ”に選定され、プロジェクトに参画。

01 3カ月の議論で醸成された未来の提供価値「自然で心地よい幸せが続く」

栗原
最初に、大林組がGREEN×EXPO 2027への出展に至った理由から話しましょうか。出発点は、大林組の基本理念である持続可能な社会の実現への貢献と、GREEN×EXPO 2027のテーマ「幸せを創る明日の風景」が強く結びついたことでした。さらに、日本では1990年に大阪で開催された「花の万博」以来、37年ぶりの開催となるA1(最高クラス)の国際園芸博覧会に社名を冠して出展することで、大林組の基本理念を広く社会に示すことも大きな目的です。出展の話を当時の佐藤副社長(現・社長)にした際には、会社のブランドビジョン「MAKE BEYOND つくるを拓く」を掘り下げたうえで臨むように、との指示をいただきました。そして2024年10月頃、若手を中心に、営業、建築、設計など社内横断的にメンバーが集められ、約20名の体制が整ったんです。ただ、我々はゼネコンとして発注者の要望に基づいて建設工事を請け負うことを主な業務としている一方で、自分たちが前面に出てつくって出展する、といったノウハウが不足しています。そこでまずは、GREEN×EXPO 2027のテーマをひもとき、自分たちなりに解釈していくところからスタートしました。
栗原 インタビュー写真
角野
私は2025年4月に着任したので、当時議論には加わっていなかったのですが、GREEN×EXPO 2027のテーマ「幸せを創る明日の風景」、大林グループが考えるサステナビリティであり、地球・社会・人の調和を目指す「Obayashi Sustainability Vision 2050」、そして主要な来場者層に設定しているα世代(2010年から2024年に生まれた世代)が求める世界、この3つを満たすものは何なのか、という切り口で議論を重ねたんですよね。
栗原
ええ。3カ月ほどディスカッションを続け、「New Sustainable Life with MAKE BEYOND」という出展コンセプトが定まりました。「with」を使っていることがキーポイントで、「社会と共に取り組んでいこう」という大林組の姿勢を示しています。そして、そこから我々が目指す未来の提供価値「自然で心地よい幸せが続く」が決まりました。これは誰かからポンと出てきたものではなく、メンバーがブレストを重ねに重ねた結果、突き抜けた瞬間があり、そこから生まれてきたフレーズです。「自然で」には「我慢しない」という意味も含まれています。我慢する必要はないので、無理なく持続できる。そうすることで、一人ひとりにとって一番良い形を目指そう、というメッセージが込められています。
角野
このコンセプトの背景には「幸せの在り方は人それぞれであり、誰かに我慢を強いることは求めない」という考えがあるんですよね。人類はものづくりによって暮らしを豊かにした一方で、温暖化などにより地球に我慢を強いてきました。では、人も地球も我慢せずに心地よい幸せを得ることはできるのか。自分だけでなく、自分の周囲や地球、未来も含めて穏やかで平和な状態が続いていく世界を体現したい。それが私たちの出展コンセプトとして行きついた答えなんですね。
角野 インタビュー写真
箕浦
近年、設計においてもサステナビリティは考えるべき重要な要素となっています。私がこのプロジェクトに関わり始めたのは、大阪・関西万博の施工が大詰めを迎えていた時期でした。万博終了後、大屋根リングをどのように次の用途に転用していくかという議論もありましたし、今後ますます、サステナビリティは意識しなければならないものになっていくはずです。

02 「仮囲いで閉じられた空間」である建設現場を社会に拓く
そして「展示のための箱」ではなく、建築物そのものを展示空間に

栗原
我々はゼネコンであり、当然のことながらすべての建築物に対して深い思いをもって設計、建設をしてきた歴史を持っています。ですから、GREEN×EXPO 2027への出展にあたり、約1000人が所属する設計本部からは、自社展示館の建屋において実現したい多くのアイデアが出てくるはずだ――そんな考えから社内での設計コンペを実施しました。期間は2025年2月の約1カ月間と非常に短かったのですが、それでも約70名が参加、約40案の応募がありました。審査時、全案を会議室のテーブルにブワーッと並べたところ本当に壮観で、改めて設計者の熱量を感じましたね。しかも、若手から部長クラスまで幅広い世代に応募いただき、部署内のモチベーションの高さも実感しました。そして選考の結果、最優秀の“プラチナ”に選定された箕浦さんの案を軸にプロジェクトを進めることとなりました。
箕浦
通常の設計業務では、お客様のご要望や建物用途などの制約がありますが、今回のコンペは純粋に大林組を表現するというテーマ。やっぱりすごくチャレンジしたくなりましたし、当然燃えますよね(笑)。コンペ終了後、周囲からは「良い案だね」といった声や、直接知らない若手からも「あれってどうやってつくったんですか」などの問い合わせを多くいただきました。
箕浦 インタビュー写真
角野
箕浦さんにとって「大林組を表現する」とは、どういったものなのでしょうか。
箕浦
コンペに挑むにあたり、展示館の設計を掘り下げていった時、最も分かりやすい概念となったのは、やはり「MAKE BEYOND つくるを拓く」でした。そこでコンセプトを、一般の認識では“仮囲いで閉じられた空間”である建設現場を社会に拓き、来場者に体感していただくことに定めたんです。そしてもう一つ、従来の展示館に多く見られた“展示のための箱”ではなく、建築物そのものを展示空間にすることも重要な指針としました。その一環として3Dプリンターでつくった壁がそのままサインや展示そのものとなって来場者を誘導する、といったアイデアを盛り込んだんです。実際にはサーキュラーエコノミー(循環経済)の観点などから3Dプリンターでつくることが今回は叶いませんでしたが、私は設計をする際に常々、人がそこをどう歩き、どう空間を捉えて、どう感じるのか、というようなシークエンス(移動することで景色が変化していく体験)を重要視していて、今回の展示館の設計でもそれを意識しました。大林組の、あるいは建設業界のポテンシャルみたいなものを、しっかり感じ取ってもらえればと思っています。
角野
箕浦さんのコンペ案には、展示館自体も展示となるという、従来の展示館よりも一歩進んだ思考が盛り込まれていましたし、今の大林組の技術を象徴するような曲線的な展示館は大きなインパクトを出せる案だったと思います。今お話のあった3Dプリンターでつくる壁は、木の仮囲いに姿を変えて検討をしているところですね。その他建物を支える骨組みも含めて、私たちが考えている展示館は、博覧会終了後に単純に解体されるのではなく、他の工事現場で再利用することを計画しています。つくる段階から解体後までを見据えており、しっかりと「Obayashi Sustainability Vision 2050」のサステナビリティのマインドにのっとっているわけです。「未来のどこか別の場所でこの展示館の部材の一部と再会するかもしれない」といったところを意識していただけると、より興味深く見ていただけるかもしれません。

03 いよいよ建設開始のフェーズへ移行
123年前の「大林高塔」を超えるにぎわいを!

インタビュー写真
栗原
コンペでは、プラチナ以外にもゴールド、シルバー、ブロンズなどの評価基準があり、優劣のつけ難い、いくつもの光るアイデアがありました。それらの要素をふまえつつ企画を検討し、現在のフェーズは、箕浦さんの案をベースに「建設現場を拓いていく」というキーワードを核にして進めてきた実施設計がほぼ完了したところです。展示館の建設には約1年を要する計画で、2027年3月の開催に向けて、いよいよ建設開始の段階に移ってきました。並行して装飾的な部分やオプションなどはもう少し検討を重ねていく予定です。
角野
一方展示館の中身については、まだ詳細は言えないのですが、「自然と共生する理想都市を築いた国」と「宇宙との暮らしが日常になった国」、この2つをテーマとした舞台をつくる予定です。展示や映像だけではなく、体験型コンテンツも用意しています。来場される皆さんには、体験を通じて大林組の出展コンセプトに共感していただき、私たちと一緒に「自然で心地よい幸せが続く」世界をつくりあげていってもらいたいと思っています。
栗原
来場される皆さんに、我々の技術力はもちろん、より良い未来を築こうとしている姿勢を見ていただくことで「大林組って、結構すごい」と感じていただけたらと願っています。でもまあ、あまり難しいことは考えず、単純に2つをテーマとした舞台での時間を楽しんでいただき、何か一つでも持ち帰っていただければ大成功ですね。それと個人的には、開催したら必ず息子を連れていくつもりです。私は子どもの頃、横浜博覧会に行って、その当時の楽しかったり、驚いたりした経験が、いまだに結構記憶に残っているんです。息子にとってGREEN×EXPO 2027が同じような体験になり、“お父さんは未来に向けてポジティブな貢献をしている会社に勤めているんだな……”と、少しでも感じてもらえれば父親冥利(みょうり)に尽きますね。
インタビュー写真
箕浦
私ももちろん息子に見せようと思っています。お父さんの会社はこんなことができるんだ、将来はお父さんと同じ仕事をしたい!と言わせたいですね。
栗原
お互い、子どもたちのためにも良い仕事をしていきましょう(笑)。ところで、今回のGREEN×EXPO 2027のようなイベントにおいて、大林組の社名を大きく冠した展示館をつくるのは初めて、と思われがちなのですが、実は違うんですよ。1903(明治36)年に大阪で開催された「第五回内国勧業博覧会」(明治政府の殖産興業政策の一つとして開催された、国内物産の博覧会)で、木造建築物として日本初のエレベータを備えた展望台「大林高塔」を建設し、大評判を得たという史実があるんです。「大林高塔」は、展示を目的とした建物でもなければ、海外向けの博覧会でつくられたものでもありませんが、今回の出展は大林組として120年超の時を経て臨む2度目のチャレンジになるわけです。大林高塔を超える評価を得て、にぎわいのあるものにしたいですよね。
角野
大林高塔は政府からの要望ではなく、大林組の創業者である大林芳五郎自らの発意で建設されたんですよね。個人的には、今回の展示館を来場者の皆さんに楽しんでもらいたいのはもちろんですが、開催に向けて関わっている社内外の多くの人たちにも「この展示館は自分が関わった!」というやりがいや誇りを感じてもらいたいと考えています。私がプロジェクト・チームに着任した2025年4月から今に至るまで、数えきれない人たちの協力・アイデアを得てここまで走ってきたわけですが、きっと大林高塔も、同じように多くの人々の知恵や熱意によって建設されたんだと思います。今後、プロジェクトが具現化していくにつれて、もっと多くの人たちとの接点が生じることになるはずです。どんな人がこの展示館に新たに関わっていくのか――それも楽しみながら開催に向かいたいと思っています。そして、多くの人の思いが詰まった展示館を見て、将来建設業界を担う子どもたち、ひいては未来の大林組の仲間が一人でも増えてくれればうれしいですね。

所属部署・役職については、2026年1月時点のものです

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